福島の町並みを生かしたまちづくり

 

 

事業の概要

背景・経過

八女市の中心市街地・福島は天正15年(1587)筑紫広門が築いた福島城を慶長6年(1601)田中吉政が大修築し、城下町を設けて政治経済の中心としたことに始まる。

元和6年(1620)、当地は久留米藩有馬氏の支配下となり、福島城は廃城となったが、城下町から在方町に転じた後も八女地域の交通要衝の地として、また、経済の中心として栄える。福島は城下町としては短期間であったが、その間に都市の主要な骨格ができあがったと言われ、今も本丸跡、城堀、屈曲した道路等が当時の面影を残している。

八女地方は近世以降、和紙・櫨ロウ・提灯・仏壇・石工品・茶など様々な特産品の開発やそれを素材とした工芸品の創作に取り組んできた。農産物の生産・流通の拠点であることに加え、積極的な商工業の振興による富の蓄積で、重厚な商家が連続する町並みを形成してきた。

旧街道(往還道路)筋にあたる矢原町、古松町、京町、宮野町、紺屋町には現在でも町ごとの町並みの景観特性がよく維持されて、伝統工芸が今なお息づく伝統的町家(江戸末期〜昭和初期)が多く残っている。これらの存在は中心市街地の個性ある景観をつくりだす貴重な歴史的文化遺産となっている。

平成3年北部九州を襲った台風17号・19号の被害は、老巧化しつつあるこれらの町家群を著しく傷め、屋根瓦や漆喰壁の被害を契機とした家屋の解体が目立って進むことになり、それまで何とか持ち堪えてきた町家が急速に失われていく危機感から、市民有志による「本町筋を愛する会」が発足して、“町屋まつり”などイベント展開などにより、保存意識の高揚への大きなインパクトとなった。

市では、これらの状況を踏まえ、平成5年度に「八女市伝統的町並み景観整備規則」を制定し、平成7年度から国土交通省の「街なみ環境整備事業」を活用して、町並みを生かしたまちづくりの振興とその具体的整備を取り組んでいる。

さらに、8〜9年度「伝統的建造物群保存対策調査」(文化庁)を行い、学術的にも価値の高い評価を受け、後世に末永く残し伝えていくことを使命としたまちづくり政策を確立するとともに、地元の皆さんと一致協力して、より国の支援制度が充実している伝統的建造物群保存地区制度(伝建制度)の導入を取り組み、平成13年6月「八女市文化的景観条例」の制定、同年12月同保存地区の都市計画決定を経て、伝建制度を実施し、平成14年5月、国の重要伝建保存地区の選定を受けている。

街なみ環境整備事業の内容

事業の具体的内容

住民主体のまちづくりを推進するため平成6年12月「まちづくり協定」を区域の居住者等の3分の2以上(424名)の合意により締結し、伝統的町家をはじめとした建築物等の景観整備などについて申し合わせを行った。そして、協定者の代表約30名で「伝統的町並み協定運営委員会」が平成7年5月に発足し、八女福島の町並みの景観等を生かしたまちづくりが具体的に進められている。

市としましては、住民、専門家の意見を充分反映した「街なみ環境整備方針及び事業計画」を平成6〜7年度に策定し、さらに平成21年度に事業計画の変更と区域拡大を行い街なみ環境整備事業を活用した景観整備事業を推進している。

主な事業

  • 生活環境施設整備 横町町家交流館(平成9年度完成)
  • 住宅等整備 :町並みの修理・修景を支援します
  • 地区防災施設整備:防災まちづくりを支援します
  • 道路の美装化 :旧住環道の美装化に取り組みます
  • その他(街路灯整備/水路整備/サイン整備など):町並みとの調和に心がけます


事業区域 
八女市本町(福島校区内)・まちづくり協定の締結範囲94.2ヘクタール

事業年度 
平成7〜令和2年度(26年間)

伝統的建造物群保存事業の内容

事業の具体的内容

伝統的建築物の修理事業・特定物件192棟(H18年1月現在)、修理限度額960万円(主屋)
伝統的工作物(塀、石積、石造物等)の修理事業
環境物件(樹木、庭園等)の復旧事業
非伝統的建築物(新築、改築等)の修景事業
管理施設・防災施設・環境等の整備事業

事業区域
八女市大字本町(福島小学校区内)・中心市街地の「八女福島伝建保存地区」19.8ヘクタール
事業年度
平成14年度〜

事業の成果・評価・課題

街なみ環境整備事業の平成7〜23年度の約17年間の成果としては、町家等の修理・修景事業が42件と、拠点施設整備1件、街路灯整備、水路護岸修理、旧往環道道路美装化工事の事業を行っている。伝統的建造物群体存事業では、平成14〜23年度の10年間の成果としては、修理事業65件の事業を行っています。また、町並みを活用したイベントとして「町屋まつり」「八女福島白壁ギャラリー」「ぼんぼりまつり」(おひなさまめぐり)「白壁新茶まつり」(平成14年まで)などが、市民と行政の連携のもと取り組まれるようになり、来客者も年々増加し、食事処など新しい店も18店オープンし少しずつではあるが、賑わいを取り戻しつつある。

短期的な課題としては、伝建制度実施に伴う「町並みを守り育て、景観は公共的なもの」という住民意識の高揚や地元の建築士・大工、そして不動産業者などへの制度内容の周知徹底等がある。

長期的な課題としては、第一に町並みに空き家が目立ち始めているので、住宅としてあるいは工房店舗としての活用に積極的なコーディネートが必要となっている。

その外に町並み来客者への駐車場の確保などが上げられる。様々な活動を積極的に取り組み、年間を通じての交流人口の拡大と町並みの地域の活性化を着実に進めなければならない。

今後の展望

歴史的文化遺産である町並みは、持続できるまちづくりの財産であり、将来にわたって本市の文化を情報発信できる最大の魅力である。したがって、一つひとつの町家を後世に残し伝え、魅力ある活用を拡大していかねばならない。

そして、住民と強く連携して、町並みを活用したイベントの充実や保存・整備事業の推進など様々な取り組みを着実に進め、八女福島の町並みを本市のイメージブランドに高め、住環境整備と観光政策の充実をからめて、交流人口の大幅な拡大で、中心市街地の活性化に大きな貢献ができると展望している。

 

この記事に関するお問い合わせ先

文化振興課 歴史まちづくり係
〒834-8585 福岡県八女市本町647番地
電話番号:0943-24-8164
ファックス:0943-24-4331

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