○八女市食料・農業・農村基本条例

平成17年6月27日

条例第15号

八女市及び八女市民は、矢部川の清流と緑豊かな田園及び丘陵等自然の恩恵を受けてきた。その中で農業は、先人たちの努力によって多くの伝統工芸とともに本市の基幹産業として今日まで営々と築かれ、全国ブランドの農産物主要産地としての名声を得ている。

農業及び農村は、農産物を生産し、市民に食料の供給を行うにとどまらず、国土の保全、水源のかん養、景観の形成、環境の保全、生物多様性の保全、文化の伝承等の多面的な機能(以下「多面的機能」という。)を有し、市民にかけがえのない財産を提供している。

しかしながら、近年における社会経済情勢の変化は著しく、国際化や都市化の波の中で農業及び農村を取り巻く環境も厳しいものとなってきた。農産物貿易の自由化、食生活の多様化などとともに農業者の減少や高齢化、後継者不足、農地の減少、食料の安全性への懸念等多くの問題が生じている。

これらの観点から、今後の本市の農業及び農村の振興と発展を図っていくためには、農業者の意欲と条件の向上はもとより、市民一人ひとりが、農業が本市の基幹産業であることを認識し、食料、農業及び農村が市民生活に果たしている役割の重要性についての理解を深めながら、地域で生産される農産物の地域内での消費をさらに進めていく必要がある。

私たち市民は、食料、農業及び農村に対する理解を深め、引き続き農業を本市の基幹産業として育みながら、魅力ある農村を次世代に引き継ぐとともに、その進むべき道を明らかにするためにこの条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、本市の食料、農業及び農村のあり方についての基本理念及びその実現に必要な主要施策等に関する事項を定めることにより、食料、農業及び農村に対する市民の理解を深めるとともに、性別・年齢を問わず農業者一人ひとりの持つ力が発揮され、安全で安心できる食料の供給と消費が図られ、もって本市の多彩な農業が持続的に発展し、農業及び農村の持つ多面的機能が発揮され、豊かで住みよい地域社会の実現に寄与することを目的とする。

(基本理念)

第2条 食料は、健康で豊かな生活を支えるものであることから、安全で安心できる農産物が安定的に生産され、供給されることにより、将来にわたって食料に対する市民の信頼が確保されるとともに、地域で生産される農産物の地域内での流通及び消費が促進され、食の重要性に対する理解の促進と地域特有の食文化の継承が図られなければならない。

2 農業においては、優良な農地と農業用水その他の農業資源並びに基幹的な担い手とその後継者及び多様な担い手が確保されるとともに、地域の特性に応じた収益性の高いゆとりある農業が営まれ、かつ、自然環境と調和した持続的な発展が図られなければならない。

3 農村は、食料の生産のみならず、市民の生活及び地域活動の場であるとともに、多面的機能を有し、自然と人間との共生ができる調和のとれた空間として整備され、かつ、保全されなければならない。

(市の責務)

第3条 市は、前条に規定する基本理念に基づき、食料、農業及び農村に関する基本的かつ総合的な施策を推進する責務を有する。

(農業者及び農業団体の責務)

第4条 農業者及び農業団体は、自らが安全な食料の生産者であり、かつ、農村における地域づくりの主体であることを認識し、自ら生産する農産物について積極的に情報を提供するとともに、安全で安心できる農産物を安定的に生産及び供給し、農業及び農村の振興に関し主体的に取り組む責務を有する。

(市民の役割)

第5条 市民は、食料、農業及び農村が市民生活に果たしている役割の重要性についての理解と関心を深め、地域で生産される農産物の積極的な消費及び健康で豊かな食生活の実践に努めるものとする。

(事業者の役割)

第6条 食品産業の事業者は、食料、農業及び農村が市民生活に果たしている役割の重要性についての理解と関心を深め、消費者への安全で安心できる食料の円滑かつ安定的な供給に努めるものとする。

(主要施策)

第7条 市は、第2条に規定する基本理念に基づき、次に掲げる事項を、食料、農業及び農村の主要な施策として、各々の施策相互の有機的な連携を図りつつ、推進するものとする。

(1) 消費者が安全で安心できる農産物を入手し、食及び農に対する信頼感を保つために必要な産地情報の提供等の施策

(2) 学校、家庭、社会教育機関及び地域社会等と連携して次に掲げる目的を達成するために必要な施策

 食の重要性や地域農産物の生産・流通事情等の理解の促進

 健康的な食生活の推進

 地域の食材を活かした地域密着型食生活と地域の食文化の継承

(3) グリーン・ツーリズム(農村地域において、自然、文化及び農業との交流を行う滞在型の余暇活動をいう。)による都市住民との交流、農業及び農村に関する情報の提供並びに学童農園等の体験を通した農業及び農村の有する多面的機能の理解促進に必要な施策

(4) 市内の学校給食の食材として、地域で生産された農産物を提供し、地域の農業及び農産物に対する理解を促進する施策

(5) 農業の生産基盤であるほ場、農道、用排水路、ため池等の整備及び遊休農地の解消等による優良農地の確保に必要な施策

(6) 農業の基幹的な担い手とその後継者、多様な担い手である女性や高齢者、新規就農者等の育成及び確保に必要な施策

(7) 年間を通じて栽培される多種にわたる作物の振興、高品質優良農産物生産の推進による農業の収益性向上並びに経営の安定を確保できる農業の仕組みづくり及び支援に必要な施策

(8) 農業者及び農業団体、食品産業の事業者並びに消費者の連携強化による地域で生産される農産物の地域内での流通及び消費の促進に必要な施策

(9) 産学官連携による農業関連技術の研究開発及び製品化に必要な施策

(10) 農薬及び肥料の適正な使用、家畜排泄物等有機物資源の有効利用による土づくり等持続性の高い農業生産方式の導入に必要な施策

(11) 農業及び農村の持つ多面的機能を十分に発揮させるための環境整備の推進に必要な施策

(12) 女性農業者の社会的経済的地位の向上、農業経営及び農業政策等の意思決定への参画の促進等の条件整備による農村における女性の持つ力が発揮される男女共同参画社会の確立に必要な施策

(食料・農業・農村基本計画の策定)

第8条 市長は、前条に規定する主要施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、安全で安心できる食料の供給並びに農業及び農村の振興に関する基本的な計画(以下「基本計画」という。)を定めなければならない。

2 市長は、基本計画を定めようとするときは、あらかじめ広く市民の意見が反映されるよう十分配慮するとともに、第11条に規定する八女市食料・農業・農村政策審議会の意見を聴かなければならない。

3 市長は、基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

4 市長は、食料、農業及び農村を取り巻く情勢の変化を勘案し、おおむね5年ごとに基本計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更しなければならない。

5 第2項及び第3項の規定は、基本計画の変更について準用する。

(実施状況の公表)

第9条 市長は、本市の食料、農業及び農村の状況並びに基本計画に基づく施策の実施状況をとりまとめ、毎年、公表するものとする。

(推進体制)

第10条 市長は、安全で安心できる食料の供給並びに農業及び農村の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための体制の整備に関し、必要な措置を講ずるものとする。

(食料・農業・農村政策審議会)

第11条 市に八女市食料・農業・農村政策審議会(以下「審議会」という。)を置く。

2 審議会は、市長の諮問に応じ、次に掲げる事項を調査審議する。

(1) 基本計画の策定、施策の実施状況及び変更に関すること。

(2) 前号に掲げるもののほか、食料、農業及び農村に関する重要な事項

3 前2項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。

(施行期日)

1 この条例は、平成17年7月1日から施行する。

(準備行為)

2 この条例を施行するために必要な準備行為は、この条例の施行の日前においても行うことができる。

(特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例の一部改正)

3 特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例(昭和31年八女市条例第34号)の一部を次のように改正する。

〔次のよう〕略

八女市食料・農業・農村基本条例

平成17年6月27日 条例第15号

(平成17年6月27日施行)