八女あれこれ27 「わが師、わが友」その十

くすり草

先月号の本紙に「八女の産物は薬」のタイトルで伝統産業の素材(例えば竹材や漆など)が持つ薬用としての効能を書きました。知人から『八女地方の薬草はありませんか?』と電話がありました。最近は薬害などの問題から民間的に伝わる薬草療法が見直されており、草や木の実などを素材とした「健康食品」がテレビで数多く宣伝されています。

薬草といっても野辺にある雑草が多いです。雑草とは広辞苑によると「いろいろの草、農耕地で目的の栽培植物以外に生える草」とあります。話は変わります。私が収集している稀き覯こう本ぼんは私の師です。その一冊に昭和七年(一九三二年)出版の教科書があります。当時の八女郡三河村(現在は八女市)の三河尋常高等小学校が小学五、六年生用に作った副読本で表紙は「郷土読本」となっています。内容は郷土(三河地区)出身の軍人(松石陸軍中将など)や大正十年(一九二一年)の大洪水の記録それに村の産業(繭や和紙)など全篇三十二項目あり古里の歴史や物産を紹介しています。この本の一項目に「くすり草」の一篇がありました。そして解説として「病院の医薬でも治らず困っていた難病が平凡な草の根、茎、葉などによって拭ぬぐうように治った」と書いてあります。

副読本には八女地方のくすり草として「どくだみ、げんのしょうこ、ひがんばな、はこべ、ぎしぎし」など十数種類をあげています。二、三種を拾ってみます。

どくだみはこの地方では「わくど草」とよんでいます。日かげの湿地に生える多年草です。一度かいだら忘れられないほどの“くさい”においがあります。このにおいが薬の役目をして細菌の力を抑える力があるとのことです。関西大学教授、松中昭一先生著「きらわれものの草の話」(岩波書店)によると「乾燥した葉や茎を煎じて飲むと利尿の効果、脳動脈硬化防止作用がある」とのことです。

おおばこ(大葉子)名は葉が大きいことによります。私たちの散歩道に多く、踏みつけられても耐えています。踏まれれば踏まれるほど頑張る草で、人生の手本としたい草です。
多年生の雑草で葉は十枚ぐらいです。種子は利尿や結石溶解を助け、全草乾燥物は慢性気管支炎や高血圧症によいとされています。私の少年時代は花茎をお互いにひっかけて、早く切れたら負けとしたヒモ相撲遊びをしていました。

道ばたに自生している半つる草のげんのしょうこは冬でも枯れることはありません。どくだみと同じくお茶代わりに飲むと夏の食あたりにすばらしい効果を発揮し、一命にかかわる胃腸病を治すことが度々あります(郷土読本)。だから「現の証拠」の名がついたのです。(「薬になる植物」難波恒雄著)

夏虫冬草

(イラスト)夏虫冬草

「郷土読本」の中での目玉は「夏虫冬草」を紹介した一篇です。文面は矢部地方の山間部で一週間ほど植物採集をした兄さん(十五歳くらい)から妹が草の話を聞いてゆくという構成になっています。兄さんは妹に対して『今度の採集行で兄さんが一ばんうれしかったのは夏虫冬草が手に入ったことです。草だか虫だか判らないだろう。よく見てごらん』と自慢し実物を見せます。

 兄さんの話をつづけます。

 『夏虫冬草はその名のとおり夏のころは虫で冬になると草となるものです。耳かきのような形をしているので一名“耳かき 茸きのこ”ともいっているし、この辺では俗に「ふうのとう」と呼んでいます。初夏の頃から初秋にかけて活動する僅わずかに一糎センチ足らずのもので、非常にいやな臭いを出すカメ虫というのがいる。夏虫冬草はこの昆虫の一種に出来た茸の類です』昭和期までは矢部地方の山間部で採取が出来ましたが、昨今は発見が難しいようです。

 広辞苑では「冬虫夏草」と逆になっており次のように解説しています。
「土中の昆虫、クモなどに寄生してその体から茸のような植物を生ずる菌類、冬は虫であるものが初夏頃から寄生菌が発芽して棒状その他の茎を生ずるのでこの名がある。(略)古来、中国では蛾類の幼虫に菌の寄生したものを乾燥して薬用に供し、これを冬虫夏草と称した。」 菌は虫の体を養分にするので虫は死に、菌は春に長さ十センチ内外の茎に育ちます。「郷土読本」には「肺結核の妙薬」と紹介しています。
「薬草」についての知識は六十歳以上の戦中派の方は常識として知っています。空襲などで負傷しても医療機関が不足していたので、身近の薬草で手当していたからです。

(八女ふるさと塾塾長/松田久彦)

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