矢部ある記(7)矢部の八名山

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矢部の起こり

(イラスト)矢部あるき

「八女」の地名は、ご存じの通り720年の日本書紀に登場しますが、「矢部」という地名はずうっとあと、南北朝期の1300年代に「夜部」「屋部」「矢部」の文字が見えるのが最初とされています。

字典では、「夜」は昼間をはさんで両わきにある暗い時間・「屋」は家にかぶさる屋根またはおおいかぶせるものと説明があります。「部」は区分けした一つ、あるいはふっくらした小高い丘という意味です。これらから「夜部」は昼なお暗き奥深い山の中・「屋部」は山高き奥づめの地と解することができます。「矢部」については、戦に必要な矢作りの人々が一団を成したことに由来するといわれています。

元中12年(1395)、大友軍を退けた五條頼治公に対し「道徹を退散させたは大慶なり。これは当山の名誉である」と良成親王が送った褒賞文の添え書きに、「御在所矢部大杣」と「矢部」の字が見えます。

八名山の選定

日本書紀には「其山峯岫重畳且美麗甚」と、奥八女の黒木・星野・矢部方面の山々は重なりが美しいと述べられ、第11代中司謙治矢部村長がその歴史的な美に目を付けました。

担当の産業振興課と杣のふるさと文化館・矢部公民館が合議、1.景観・眺望2.登山道の整備状況3.五つの旧小学校区4.歴史的・文化的価値5.村における位置等を検討し、八女にちなみ釈迦岳・御前岳・猿駈山・三国山・前門岳・文字岳・高取山・城山の八つを選びました。新市誕生の年、平成22年のことです。

八名山の紹介

釈迦岳は標高1230メートル、福岡県一の高峰です。修験者たちが修行の途、石の釈迦像を安置したのが山の名の由来です。二体のうち古い方は、元禄五年(1692)の刻が見えます。切り立つ崖の上の頂上は狭いですが、最高峰の展望を楽しみ、直角に近い崖に設置されたくさりやロープで登り下りすると、修行者の気分が味わえます。

御前岳は県下第二位の高峰で、1209メートル。御前とは高貴な人の呼び方で、美しく壮大な三角山は、その名に恥じません。日向神に天孫降臨伝説がありますが、山頂が降臨の地かもしれません。以前は、瓊瓊杵尊妃の木花之開耶姫を祀る社が建っていました。この山は、筑後志で「御前山」「前山」、豊後国志に「田代山」「田代権現」、日田郡志には「田代獄」、津江入庭楽に「御前獄」、豊後側からは「権現嶽」と呼ばれ、地元の御前岳を加え「御前岳八名」になります。呼び名の多さにも、この山のパワー・神秘性が表れています。

三国山は994メートル。登山口は442号柴庵より山口方面へ。頂上に筑後・豊後・肥後と三国の国境標があり、わずか三歩で三つの国を周遊します。三国に接することが名の由来で、戦の時代は軍事的に大切な地でした。頂上並びに少し離れた鬼の洞という場所からの眺望は、絶句ものです。

猿駈山968メートルは、日田市鯛生への途矢部村竹原から登ります。猿が駈け回るほどの奥山で、進軍を押し止めるの意味もあり、軍事上の要地だったようです。頂上は杉に囲まれ見通しが利きませんが、途中から見える竹原集落や周りの山は絶景です。

前門岳は922メートル。登山口へは442号線笹又橋手前を右折。山の名は、御前岳・日向神・八女津媛神社・良成親王御所どれかの前門という意味があるようです。途中の渓谷も素晴らしく、山の素晴らしさを満喫できます。頂上付近は急坂ですが、頂上からの大展望・涼風を堪能できます。七月末からは、ヒガンバナ科キツネノカミソリの群落が目を楽しませてくれます。

文字岳はとがった807メートルですが、登るには楽な山です。登山口は442号線西園橋手前を右折。文字とは、修験者の修行あるいは学問に関係があると思われます。都付近では文字は銭を表すそうで、「軍用金」の保管地だったかもしれません。杉林をぬける風が涼しく、至福を味わえます。

高取山は721メートル。鶴橋を渡り右折しダムの北側から、あるいは矢部村鬼塚より星野方面へ向かう途中から登ります。高取とは、高禄を得るという意味と鷹狩りの山という意味を持ちます。頂上は東・南・西方が開け、御前・釈迦から猿駈・前門・城山と、五名山も展望できる山です。景観のぜいたくさが山の名の由来ともいえます。

城山は矢部村のほぼ中央、市役所矢部支所の南に位置する643メートルの山。矢部小学校裏から登ります。南北朝時代の初期、征西将軍懐良親王に随従した五條頼元公の第三子良遠公が難攻不落の高屋城を築き、筑後東部を守ったことが名の由来です。その子で先述の頼治公もこの城で良成親王を守ったことから、大切なものを守る力を有する山として、登山者に大人気です。

矢部村 山口久幸

[参考]矢部村誌・星野村史・広辞苑・漢字源 久留米地名研究会 永井正範「八女と矢部」

 

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