第6章 再犯防止推進計画 第1節 計画策定の経緯 平成28年12月に施行された「再犯の防止等の推進に関する法律」により、地方公共団体は、再犯の防止等に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地域の状況に応じた施策を策定し、実施する責務を有すること、また再犯の防止等に関する計画を定めるよう努めることとされました。 これを受けて国では平成29年12月に「再犯防止推進計画」を、福岡県でも平成31年に「福岡県再犯防止推進計画」を策定しました。 ほんしにおいても、過去に犯罪や非行をした人の立ち直りの支援と、地域社会の一員として生活できるよう住民の理解と促進を図るため、「八女市再犯防止推進計画」を地域福祉計画に内包する形で策定することとしました。 第2節 計画策定の趣旨 令和3年版犯罪白書によると、刑法犯の認知件数は平成14年にさいこうちに達して以降は減少を続けており、平成26年以降は毎年、戦後最少を更新しています。 しかし、犯罪により検挙された人のうち、再犯者であった者の割合を示す「再犯者率」は年々高くなってきており、令和2年は49.1%で、調査を開始した昭和47年以降、過去最高の数字です。 福岡県における再犯者率は令和2年で47.5%であり、全国の49.1%に比較すると低いあたいとなっているものの、やはり福岡県においても高い水準にあると言えます。また、刑務所等に入所する人を年ごとにみると、福岡県では再入所する人が全体の6割を超えており、再犯者による犯罪が非常に高い水準で推移しています。 罪を犯す人には様々な背景があり、貧困や差別、孤独などの生きづらさが影響している人もいます。また刑期を終えて出所しても、住むところがない、高齢で身寄りがない、仕事が見つからないなど、地域社会で生活するうえで様々な課題を抱えています。それらを抱えたまま日々を過ごし、地域社会になじめず、行政などの支援機関との関わりも持てず、結果として犯罪を繰り返してしまう人もいます。 再犯を起こす前の段階で、適切な行政サービス等につなげることが必要であり、地域社会全体で円滑な社会復帰に向けた支援をおこなうことが重要です。 「八女市再犯防止推進計画」は、「再犯の防止等の推進に関する法律」第8条第1項に定める地方再犯防止推進計画として策定するものであり、計画期間は令和5年度から令和9年度までの5年間とします。 第3節 ほんしにおける再犯の状況 やめ警察署管内において、犯行時年齢が20歳以上の刑法犯総数は令和3年で112人ですが、そのうち再犯者は53人であり、再犯者率は47.3%となっています。全国の50.0%、福岡県の48.7%と比較すればわずかに低いあたいであるものの、検挙された人のほぼ半数が前科または前歴を有していることになります。 全国の再犯者率は調査を開始した昭和47年以降、過去最高水準でたかどまりしていますが、福岡県の再犯者率は、平成29年においては全国より高かったものの、平成30年に全国と並び、令和がん年以降は全国を下回って推移しています。 やめ警察署管内は、犯罪件数が少ないため再犯者率の推移傾向を把握することは困難ですが、平成29年から令和3年において、4割から5割が再犯者であることが分かります。 第4節 計画における重点課題と計画体系 平成29年12月、再犯防止推進法に基づき、再犯防止推進計画が閣議決定されました。国の再犯防止推進計画には、7つの重点課題について、115の具体的施策が盛り込まれています。 国の「再犯防止推進計画」における7つの重点課題 1 就労・住居の確保 2 保健医療・福祉サービスの利用の促進 3 学校等と連携した就学支援の実施 4 犯罪をした者等の特性に応じた効果的な指導の実施 5 民間協力者の活動の促進,広報・啓発活動の推進 6 地方公共団体との連携強化 7 関係機関の人的・物的体制の整備 ほんしにおいても、国や福岡県、警察や民間団体等と連携しながら、市民が安全で安心して暮らせる社会の実現に寄与するため、次の重点課題に取り組みます。 「八女市再犯防止推進計画」における重点課題 1 出所者に対する就労支援 2 出所後の住居確保支援 3 薬物依存に関する治療・支援 4 児童生徒の健全育成 5 関係機関への支援と連携強化 6 再犯防止に関する広報・啓発   第5節 今後の取り組み 犯罪をした人々が再びつみを犯すことがないよう、社会復帰のための支援に加えて、地域社会で孤立しないような受け入れ体制をつくり、息の長い支援をおこなっていくことが重要です。 誰もが安心して暮らすことができるまちづくりの一環として、皆が社会の一員としてお互いを尊重し、支えあうことで、立ち直ろうとする人を受け入れることができる地域社会の実現を目指します。 1 出所者に対する就労支援 現状と課題 やめ警察署によると、管内における令和2年の刑法犯総数に占める無職者の割合は、40.0%となっています。 仕事に就いていない人の再犯率は、仕事に就いている人の再犯率と比べて約3倍高く、不安定な就労が再犯リスクに結びつきやすいと言われています。再犯防止に向けて就労を確保し、生活基盤を安定させることが重要です。 具体的な取り組み 就職に向けた相談・支援等の充実 福岡県障害者就業・生活支援センター(障害者就業・生活支援センター デュナミス)や福岡県発達しょうがい者支援センター(あおぞら)、生活困窮者自立支援制度における就労準備支援事業・就労訓練事業、生活保護受給者等就労自立促進事業など、犯罪をした者の特性に応じた就職、就労定着を図るために、福祉的支援制度を活用します。 非行少年の就職及び就労の定着を図るために、少年サポートセンター、ハローワーク等と連携します。 就労支援に関する制度及び支援窓口が、一層身近なものとなるように、周知・広報に努めます。 協力雇用主の拡大に向けて保護司会と連携し、制度の周知に努めます。 2 出所後の住居確保支援 現状と課題 つみを犯した人の中には、身元保証人を得ることが困難だったり、家賃滞納歴により民間家賃保証会社が利用できなかったりして、住居を確保できないまま刑務所等から出所する人がいます。福岡県内でも令和3年において19.1%の人がそうした状況であり、生活拠点がないことで多くの課題を抱えることになります。また、出所時に帰住先がある人よりも、ない人の方が再犯に至りやすいという数字も出ています。 適切な住居の確保は、地域社会において安定した生活を送るための大前提であり、再犯防止を図るうえでも重要であることから、出所後の住居確保に向けた対策を講じる必要があると言えます。 具体的な取り組み 住居確保に関する支援につなげる取り組み 住居確保に関する相談が生じた際は、対象者の状況に応じて、公営住宅や福祉の既存制度の活用も検討しながら、適切な相談先や支援につなげます。 住宅セーフティネット制度の活用促進 福岡県と連携しながら、居住支援法人の紹介など住居確保の情報提供に努めます。 3 薬物依存に関する治療・支援 現状と課題 令和3年に福岡県内で刑務所に入所した人のうち、覚醒剤取締法または麻薬及び向精神薬取締法によるものは33.2%に上ります。近年は大麻の検挙者数が増加しており、その多くは若者です。 違法薬物の使用などのつみを犯した人、特に薬物依存症患者については、薬物を使用しないよう指導するだけでなく、薬物依存症が回復できる病気であるという認識のもと、保健・医療機関や民間団体などが専門的な治療や支援をおこないながら社会復帰に向けて取り組む必要があります。 薬物依存症は、本人のみならず家族や周囲を巻き込み、暮らしに大きな影響を与えます。周囲の人々が理解を深め、適切に対応できるようにするために、情報提供や相談支援を充実させるとともに、社会全体へ向けた広報啓発活動も重要です。 具体的な取り組み 薬物依存に関する支援につなげる取り組み 薬物依存に関する相談が生じた際は、福岡県や社会福祉協議会、医療機関、民間支援施設、自助グループ等と連携し、適切な治療や支援につなげます。 薬物依存に対する理解の促進 規制薬物の乱用は、犯罪行為であると同時に、治療や支援が必要な精神症状でもあるという理解が地域に広がるよう、関係機関・民間団体と連携した広報・啓発活動を実施します。 4 児童生徒の健全育成 現状と課題 将来を担う児童生徒の健全育成を図るためには、再犯防止はもちろんですが、まずは非行の未然防止や早期対応を充実させることが必要です。 非行に走る少年にも大人と同様、様々な背景があります。本人の規範意識の低さもあるかもしれませんが、家庭の問題や友人関係、学校生活、また社会状況の変化など様々な要因が考えられます。 子どもの成長に合わせ、家庭や学校、地域社会などが一体となって非行防止に取り組むことが大切です。 具体的な取り組み 喫煙・飲酒・薬物乱用防止教育の一体的推進 児童・生徒の喫煙・飲酒・薬物乱用を防止するため、学校において、健康教育の一環として、家庭・地域等と連携を図りながら、喫煙・飲酒・薬物乱用防止教育を一体的に推進します。 児童生徒の非行の未然防止 小中学校にスクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカーを配置し、様々な悩みを抱える児童生徒及び保護者に対して適切に相談支援をおこないます。 5 関係機関への支援と連携強化 現状と課題 犯罪により刑務所等へ入所した人も、非行により少年院等に入所した人も、一定の期間を経たら施設を出て、地域社会の一員として生活することになります。しかし就労・就学や住居、健康状態、隣近所との人間関係など、様々な課題を抱えた状態に置かれ、そうした問題を一人で抱え込み、解決に至らず再犯に及ぶことも考えられます。 更生保護に当たっては、民間ボランティアである保護司が親身に寄り添い、立ち直りの手助けをおこなっていますが、広範にわたる生活課題の解決や支援については、行政や警察など各関係機関が連携し、再犯防止施策の推進に取り組むことが必要です。 具体的な取り組み 保護司会への支援と連携 やめ保護司会やめ支部への補助金の交付など、更生保護活動をおこなう保護司会の活動に対する支援をおこないます。 社会復帰するうえで福祉的支援を要する人には、保護司会と連携して適切な支援をおこないます。 保護司会と連携し、保護司の人材確保に協力します。 警察署との連携 やめ警察署と連携し、防犯教室や犯罪防止教室等を実施します。 6 再犯防止に関する広報・啓発 現状と課題 過去につみを犯した人たちが社会復帰するためには、孤立することなく再び地域社会の一員として生活していけるよう社会全体で支援していくことが重要です。 「社会を明るくする運動」をはじめ、民間団体等による再犯の防止等に関する活動について広報・啓発をしていくことで、人々の「誰一人取り残さない」社会の実現への意識が高まると考えられます。 犯罪の防止と、犯罪をした人たちの更生について理解を深め、安全・安心な地域社会を築くために、より多くの市民に広報・啓発をおこない、関心と理解を得る必要があります。 具体的な取り組み 再犯防止に関する広報・啓発活動の推進 再犯防止啓発月間(7月)において、各種会議や広報やめ、FMやめ、インターネットでの情報発信などにより、再犯防止についての広報活動を集中的に実施します。 保護司会と連携し、社会を明るくする運動などを通して広報活動をおこなっていきます。