第4章 地域福祉計画 基本目標1 相談しやすい雰囲気づくり ほんしでは、行政のほかにも、社会福祉協議会をはじめとする社会福祉法人、NPO法人、その他様々な機関や団体が、地域で支援を必要としている人たちの生活や活動を支える重要な役割を果たしています。アンケート調査結果からも、生活上の困りごとを抱えた時、家族以外で頼れる窓口としてこれらの機関や団体が市民から一定の信頼を得ていることが示されています。 しかし、従来のような、対象者の種別や縦割り型のサービス提供体制のもとでは相談窓口が分散され、関連する情報が断片的になりがちです。アンケート調査結果からも、「たくさんの情報があって分かりにくい(40歳代女性)」という声が挙がるなど、利用者にとっては分かりにくく、利用しにくいものになっている面もあります。 地域にどのようなサービスが存在していて、どうすればそれらのサービスが利用できるのかという情報を、そのサービスを必要とする人に、必要な時に、できるだけ分かりやすく伝えることが大切です。また、地域で悩みや問題を抱える人が、どこに相談すればよいか分からず支援が遅れてしまうといったことのないよう、いつでも身近に、気軽に相談することができる相談支援体制をさらに充実し、それを維持することが必要です。 (1)支援の情報を分かりやすく伝える 現状と課題 アンケート調査からは、「(高齢になって車の運転ができなくなるなど)いざ困りごとが生じた場合にどのような支援やサービスがあるのかなどの情報を知りたい(30歳代女性)」、「高齢者向けの資料は工夫されているが、若者に向けた情報発信は工夫が必要(50歳代女性)」など、情報提供のありかたを巡っては、多種多様な声が挙がっています。 関係団体ヒアリングからは、団体の活動情報の発信方法として「会員などによる口コミ」が最も多く挙げられています。複雑で多様な困りごとを抱えた市民一人ひとりに対して、可能な限り寄り添いつつ、支援に関する情報を過不足なく提供する体制が必要といえます。 悩みや不安の相談先として、「市役所などの行政機関」、「社会福祉協議会」、「民生委員児童委員」が多く挙げられており、市民にとって「頼れる相談先」として認識されている実態がうかがえます。市民の期待に応えるべく、今後も引き続き、各関係機関が連携するとともに、相談支援担当者の専門性の向上を図っていくことも重要です。 取り組みの方針 福祉に関する支援を必要とする人が、必要な情報を、いつでも得られるような仕組みづくりを進めます。また、情報の入手が困難な人へのきめ細かい配慮など、分かりやすい情報を提供するための工夫と充実を図ります。 困りごとを抱える人の様々なニーズに適切に対応することができるよう、相談支援員の専門性を向上させると共に、丁寧な相談対応を進めるなど、相談者の利便性向上に取り組みます。 福祉や生活上の様々な相談に速やかに対応し、適切な支援につながるよう、行政内はもとより、相談支援事業所や関係機関の間で情報共有や連携強化を進め、福祉分野にとどまらない、他分野を含めた包括的な相談支援に取り組みます。 役割分担 自助(自分や家族の取り組み) 知る 普段から、広報紙や回覧板、FMやめなど様々な媒体から情報を収集し、いざというときに必要な福祉の情報に関心を持ちます。 伝える 難しい問題を自分や家族だけで抱え込まず、相談機関を積極的に利用し、抱えている問題や必要とする支援について伝えます。 解決に向きあう 複雑な困りごとは、まず身近な人に相談し、信頼できる支援者の力を借りつつ、解決に向きあいます。 互助・共助(隣近所の協力、地域活動団体の取り組み) 近所づきあい 近所づきあいを大切にし、福祉に関する支援の情報を、お互いに気軽に交換しあえる関係を築きます。 情報交換の場づくり 福祉に関する支援については、回覧板などを活用し積極的に周知し、講演会や研修会や座談会を開催するとともに、情報交換や意見交換ができる場や機会を設けます。 ふれあいサロンや子育てサークル等の場、しょうがいがある人やその家族の団体での集まりを活用し、情報を共有します。 専門機関との協力 地域生活上の課題等は地域住民で共有し、解決策を専門的な支援機関と協力しながら協議します。 見守る・つなぐ 隣近所の人や地域住民が福祉の困りごとを抱えている場合は、本人の意向に沿いながら、行政機関等の専門の相談窓口へつなぎます。 共助(社会福祉協議会、非営利法人を含む事業所等の取り組み) 広報の充実 社協だよりやホームページ、パンフレットを充実し、紙面の文字の拡大や平易な文章表記等、分かりやすい情報提供に努めます。また、SNS(ライン等)を活用し、相談日の周知をおこないます。 福祉サービス事業所等では、利用者やその家族だけでなく、地域の人たちに支援の情報やサービス内容を理解してもらうため、分かりやすいホームページやパンフレットを作成するとともに、施設見学等を積極的に開催します。 地域の場の活用及び地域人材との連携 ふれあいサロン等の小地域福祉活動の場に参加し、地域でおこなわれている福祉活動や福祉の支援に関する情報提供をはじめ、民生委員児童委員や福祉委員等と連携し、きめ細かな情報提供に努めます。 専門性の向上 相談員の専門性の向上に努めると共に訪問相談もおこなうなど、相談支援体制の充実を図ります。 専門性の高い相談支援への対応と相談者の利便性の向上のため、市や各相談支援事業所と情報交換や連携を強化します。 相談支援事業所等では、相談員の傾聴力や専門性の向上に努めると共に、相談者の利便性の向上、相談者の自己選択・自己決定を大切にする意思決定支援体制の充実を図ります。 福祉総合相談と分野横断的連携 福祉総合相談センターでは、複雑な課題を抱える相談者の課題をひも解き、関係する機関や事業所等と協力関係を構築しながら、福祉分野の横断的な相談支援に応じていく体制づくりを進めます。 分野以外の課題を抱える利用者へは、本人の意向に沿い、その課題に関係する機関や事業所等と情報を共有・連携しながら相談支援をおこないます。 こうじょ(行政の取り組み) 広報の充実 文字のサイズや平易な表現等を意識し、広報やめやホームページ、SNS、FMやめ、パンフレット等、様々な媒体で福祉情報を提供します。 地域の組織や団体、保育所等や小・中学校等を通じ、あらゆる機会を活用して、福祉に関する支援制度の周知・浸透に努めます。 専門相談窓口の周知 福祉に関する支援についての情報提供や専門的な相談に応じる窓口の周知を図り、窓口では情報がただしく伝わるよう、意思疎通支援等の合理的配慮に努めます。 専門性の向上 相談担当職員の専門性向上のため、研修への参加を促し、より専門性の高い相談支援にも対応できるよう努めます。 専門職の配置や専門的な福祉サービス事業所や機関等との連携、情報交換・共有をおこない、相談支援体制の強化に取り組みます。 訪問型・伴走型支援 相談窓口に訪れることが難しい人に対しては、訪問相談支援をおこなうなど、利便性の向上に努めます。 担当する相談窓口が複数箇所にまたがるときには、相談者に対し丁寧な案内を心がけ、必要に応じて同行するなど、その人に合った支援をします。 各相談支援窓口の連携 地域で活動している相談支援員のネットワークを広げ、情報交換・共有の充実を図りながら、複雑化・複合化した福祉の課題を抱える人やその世帯を包括的かつ専門的に相談支援することができるよう努めます。 (2)身近で気軽な相談支援を進める 現状と課題 ほんしは、民生委員児童委員をはじめ、地域において福祉活動に関わっている多くの人たちの努力によって、身近で気軽に相談できる体制が構築されています。 しかし、「八女市地域福祉計画策定委員会・地域福祉活動計画策定委員会」(以下「策定委員会」という。)では、「何か困ったことが生じたとしても、高齢者であれば気軽に相談できる信頼のおける地域の担当者の顔が思い浮かぶものの、内部しょうがいのある人や子育て世帯など、支援の手が届きづらい市民にとっては、まだまだ気軽に相談できる状況には至っていないのではないか」との意見がありました。 また、アンケート調査結果の中にも、「相談したくても、支援を受けることに不安を感じたり、世間体を気にしたりしてしまう。相談を受けるのを待つだけではなく、一人ひとりへのこえかけも大切なのではないか。(65歳から69歳男性)」といった声もありました。 団体ヒアリングからは、「マスクのために表情をうかがうことが困難になった」、「生活が苦しくなった」、「外出の機会が減った」など、コロナ禍をきっかけに生じた変化による戸惑いの声が多く聞かれました。 このことから、現在、まるごとサポーターが進めているアウトリーチでの相談支援に対するニーズが高いことが分かります。 これまで福祉に接点が無かった市民に対する相談窓口の啓発 こんにちのコロナ禍を契機に経済的に困窮したり、感染や病気への不安により新たな生活課題を抱えたりする市民の中には、これまで福祉的支援が必要なかったがゆえに、どこに助けを求めてよいか分からず、地域で孤立している人が存在する可能性があります。すべての市民に対して、属性や世代を問わず包括的に相談を受け止める「包括的相談支援」など、地域には身近で気軽に相談できる窓口があるということを周知し、いざという時に頼れる場所があることを広く市民に知ってもらうことが大切です。 取り組みの方針 近隣住民による安否確認や「ふれあいサロン」での交流などを通じて、身近な地域住民が互いに相談に乗り、必要に応じて行政などの相談窓口につなぐことができるよう努めます。 民生委員児童委員など、地域において相談活動に携わる人たちが、住民の身近で気軽な相談相手になるよう努めます。 行政や社会福祉協議会、相談支援をおこなっている福祉サービス事業所などが住民にとってより身近で利便性の良いものとなるように努めます。 役割分担 自助(自分や家族の取り組み) ひとりで抱え込まない 困っているときには悩みをひとりで抱え込まず、相談しやすい人にまず相談します。 互助・共助(隣近所の協力、地域活動団体の取り組み) 気軽に相談できる近所づきあい 近所づきあいを大切にし、お互いに気軽に相談しあえる関係を築き、困っている様子を見かけたら、ひとこえかけます。 身近な相談相手 民生委員児童委員など相談活動に携わる人たちは、日頃から地域において信頼関係を築き、相談しやすい雰囲気づくりを心がけ、住民にとって気軽に相談できる存在となるよう努めます。 情報交換の機会を活用し連携強化 相談活動に携わる人同士で情報や意見を交換できる場や機会を設けるなど、連携を強化する仕組みづくりを進めます。 共助(社会福祉協議会、非営利法人を含む事業所等の取り組み) 相談しやすい体制づくりと総合相談の充実 利用者やその家族、地域の人たちが、気軽に相談できる雰囲気づくりと相談しやすい体制づくりに努めます。 積極的に地域へ出向き、相談に応じ、福祉に関する支援の利用につないでいく、アウトリーチ型の支援を進めます。 民生委員児童委員連絡協議会活動への協力をおこなうとともに、顔の見える関係づくりを図り包括的な支援体制づくりに努めます。 こうじょ(行政の取り組み) 利用しやすい相談窓口の周知と体制づくり 地域において相談活動に携わる人たちや地域の相談支援事業所の周知を図ります。 誰もが必要なときに気軽に相談できるような雰囲気と相談しやすい体制を整えます。 地域へ出向き、相談に応じながら、福祉に関する支援の利用につないでいく、アウトリーチ型の支援を進めます。 相談支援事業所を地域における相談支援の拠点として、その機能を充実させます。 相談者がどこに相談してよいか分からない場合でも、先に相談した身近な窓口から適切な支援へつながるような連携体制を整えます。 民生委員児童委員連絡協議会の活動を支援し、民生委員児童委員が活動しやすい環境づくりに努めます。 基本目標2 連携した支援ができる体制づくり 課題が複雑化・複合化していたり、制度の狭間にあったり、支援を必要とする人が地域の中で孤立していたりする場合、それらの人を支援につなげるには、公的機関や専門職による制度に基づいた福祉サービスや支援はもちろん、地域の人々やボランティア、非営利団体(NPO)などの制度に基づかない援助の充実が必要です。 それら複数の人・組織や団体が協力したり、お互いを補いあったりすることによってこそ、それぞれの活動や取り組みが広がり、高い効果が期待できます。よって、地域で活動する団体、行政、関係機関、企業、学校等が横のつながりの関係を強め、連携を深めていくことが大切です。 策定委員会では、長いねんげつにわたる関係者の努力によって、組織間の関係を徐々に深めており、従来に比べてより円滑な連携がなされつつあるという趣旨の意見がありました。単一の組織では対応が困難な、複雑化・複合化した課題が増加しつつある中で、ほんしのネットワークを通じた連携によって、地域の関係者とともに、現在の体制をより強固なものにしていく必要があります。 (1)福祉サービスの量や質の充実を図る 現状と課題 ほんしは北九州市に次いで県下第2位の広大な面積を有するため、人口の状況や交通環境をはじめとした生活環境などの地域差が大きいという特徴があります。 アンケート調査では、「矢部地区であれば車が必要不可欠であり、そのことに伴って燃料に係るコストや時間的な問題など、都市部とは異なった課題がある。そのような地域の特性に応じたサービスが必要(50歳代女性)」との声がありました。 また、団体ヒアリングからは、「高齢のため免許証を返納したい気持ちはあるものの、返納してしまうと生活に困るという住民がいる」との声がありました。 このように、ほんしの地域性に加えて、地域住民の高齢化に伴う課題があることが分かります。 ほんしでは、市民の移動・交通手段として平成22年12月から予約型乗合タクシーを市全域で運行するほか、中山間地域では社会福祉協議会やNPO法人による福祉有償運送等が展開されています。 今後、各種福祉サービスの量・質の両面でさらなる充実を図ることはもちろんのこと、地域の実情に応じた支援をしていくことが必要です。 取り組みの方針 法や制度に定める福祉サービスはもとより、制度外の支援も含め、必要とする住民に対し、適切に福祉サービスを提供できる体制づくりを進めることで、安心して暮らせる支援の充実を図ります。 役割分担 自助(自分や家族の取り組み) 制度を知り、自らを守る 自らの生活を守る制度について学び、苦情相談窓口や福祉サービス・成年後見制度等を必要に応じて活用します。 互助・共助(隣近所の協力、地域活動団体の取り組み) 地域の事業所を知る 地域の福祉サービス事業所の情報を知り、行事等へは積極的に参加するなど、福祉サービス事業所との交流を深めます。 共助(社会福祉協議会、非営利法人を含む事業所等の取り組み) 利用者及び家族支援の充実 利用者やその家族、地域の人が住みなれた地域で生活を継続できるように、安心と信頼のできる質の高い福祉サービスを提供します。 地域課題把握と地域支援 地域で課題となっている新たな福祉ニーズに対し、具体的な方策を検討し、地域の組織ときょうどうしながらその解決策を検討します。 権利擁護の充実 日常生活自立支援事業や法人後見支援事業、福祉資金貸付事業等の利用促進に向けて周知するとともに、事業の円滑な実施を進め、個人の尊厳とその人らしさを支えます。 住まいと日常生活支援の一体的な提供をおこない、安心の実現を目指します。 福祉サービスへの苦情相談に対し、苦情解決制度を説明するとともに、必要に応じて、その解決に向けて対応します。 こうじょ(行政の取り組み) 自主的な助けあい活動の支援 地域の市民等が自主的な活動としておこなう生活支援、助けあいの取り組みを支援し、推進します。 事業者との意識共有 社会福祉法人をはじめとした福祉サービス事業者と共に、市民生活を支えるためのサービスの質の向上や地域貢献の取り組みについて意識を共有し、支援します。 子育て家族や家族介護者等への支援の充実 子育て家族や家族介護者等への支援の充実を図ります。 公共交通等の検討 予約型乗合タクシーの運用や福祉有償運送など地域公共交通のありかたについて、地域の高齢化、子育て支援の充実も見据え、利便性を高めるための各課協議・検討をおこない、交通弱者への支援を進めます。 適切なサービスの利用支援 福祉サービスを利用するに当たっての情報(第三者評価制度)や苦情解決のための支援等について、周知・啓発します。 成年後見制度の利用促進 成年後見制度に関する周知・啓発に努め、制度を安心して利用できるように支援し利用促進を図ります。 (2)連携した支援体制の充実を図る 現状と課題 アンケート調査では、「子育てをしながら介護をした経験があり、のどから手が出そうなくらい助けてもらいたい時もありました(50歳代女性)」という意見がありました。市民の多くが抱えている生活上の困りごとは、この声のように複雑化・複合化しがちです。 ほんしには、「支援して欲しい」というニーズに対して、「支援したい」と考える市民も多く存在しています。そうした「地域の力」はまだまだ大きなものがあると言えますが、一方で複雑化・複合化した生活課題に対しては、「素人個人判断での支援は難しいと思います。ボランティアや近所付きあいに頼るのは危険性を感じます。(20歳代女性)」といった意見があることも事実です。 団体ヒアリング調査からは、市や社会福祉協議会に対して、設備面・資金面での支援のほかに、人材確保、広報活動、情報提供などを望んでいる声が多く挙げられていましたが、「協力関係がとれていればどのようなことにも取り組めると思う」、「強みを活かせばなんでもできると思います」などといった力強い声もありました。 市民一人ひとりの力だけでは対処できないあらゆる課題に対して、関係する人や団体、機関が連携することで解決に導く必要があります。 地域課題の複雑化・複合化 近年、80歳代の親が、自宅にひきこもる50歳代の子どもの生活を支え、経済的にも精神的にも行き詰まってしまう「ハチマルゴーマル問題」や、子どもが病気やしょうがいのある家族の介護等により、本来受けるべき教育や人間関係構築の機会を得られない「ヤングケアラー」など、様々な問題が複雑に絡みあい複数の分野にまたがった課題が増加しています。また、どの制度にも当てはまらない狭間のニーズ等、従来の支援体制では対応できない課題も増加しています。 ほんしでは市全体の支援関係機関が、これまでに培ってきた相談支援の枠組みを活かしつつ、複雑化・複合化した支援ニーズに対応する包括的な支援体制を構築するため、「包括的相談支援事業」、「参加支援事業」、「地域づくりに向けた支援事業」、「アウトリーチ等を通じた継続的支援事業」、「多機関きょうどう事業」を一体的に実施する重層的支援体制整備事業に取り組むことにより「誰ひとり取り残さないまち」の実現を目指します。 取り組みの方針 福祉の課題を抱える人等への速やかな支援や虐待の早期発見・防止、成年後見制度の適切な利用・不正防止のために、市の各担当部署や相談支援事業所、福祉サービス事業所等が連携を強化し、地域の組織や団体とも連携が図れるような包括的な支援ができる体制づくりをおこないます。 子ども・しょうがい・高齢・生活困窮といった複数の分野にまたがる複雑化・複合化した福祉の課題を抱える人や世帯には、市と社会福祉協議会が中心となって各関係機関が連携し、重層的な支援をおこないます。 どこに相談してよいか分からない悩みや問題を受けとめる相談体制づくりをおこないます。 役割分担 自助(自分や家族の取り組み) 気づいたら相談機関へつなぐ 福祉的な課題を抱えている人や虐待が疑われるケースに気づいたときには、その人が適切な支援につながるよう、市の担当課や相談機関、警察などへ速やかに連絡します。 互助・共助(隣近所の協力、地域活動団体の取り組み) 気づいたら相談機関へつなぐ(再掲) 福祉的な課題を抱えている人や虐待が疑われるケースに気づいたときには、その人が適切な支援につながるよう、市の担当課や相談機関、警察などへ速やかに連絡します。 活動への理解と協力 行政区やシニアクラブ、民生委員児童委員や福祉委員等による地域福祉活動について理解し、可能な限り協力すると共に、活動する人たちに対しては、お互い様の気持ちでねぎらいと言葉かけを大切にします。 共助(社会福祉協議会、非営利法人を含む事業所等の取り組み) 新たなニーズの発掘・支援 公的制度の対象にならない人に対して、自立した生活が送れるよう、新たな事業・活動の検討・実施に努めると共に、市民が抱える福祉課題に的確に対応していくため、新たなニーズの把握に努めます。 地域を基盤とした福祉的活動の支援体制の拡充 生活に困難を抱えている人への支援は、地域の組織や団体、事業所等の理解と協力を得ながら、八女市社会福祉法人連絡会と連携し、その解決に向けた事業連携の拡充をおこないます。 制度の狭間と複雑化・複合化した問題への対応 関係機関及び団体とのネットワークを活かし、支援につながりにくい制度の狭間に置かれ課題が複雑化・複合化している人(家族)を支援するために、福祉生活支援室(ほっと館やめ)とまるごとサポーターのさらなる支援機能強化に努め、重層的な支援活動をおこないます。 こうじょ(行政の取り組み) 地域を基盤とした支援体制づくり 地域の組織や団体、事業所等へ理解と協力を求めながら、地域生活を基盤とした支援体制づくりを進めます。 各関係協議会や会議の機能強化と横断的連携 生活困窮者自立支援事業の情報共有や支援の調整をおこなう、自立支援庁内連絡会議の充実を図ります。 地域ケア会議や自立支援協議会、要保護児童対策地域協議会、成年後見制度利用促進地域連携ネットワーク推進協議会等の協議の場をさらに充実させます。 各協議会や支援者間のネットワークで横断的に連携し、情報交換や共有を図ることで、複雑化・複合化した福祉課題や消費生活相談等の新たな課題への解決に努めます。 重層的支援体制整備事業 複雑化・複合化した福祉の課題を抱える人や世帯に対し、市と社会福祉協議会が中心となって各関係機関と連携しながら、重層的な支援をおこないます。 断らない相談支援体制づくり 相談者がどこに相談してよいか分からない場合でも、まずは最初に対応した窓口が一旦受け止め、適切な機関へつなぐなど、断らない相談支援体制づくりに努めるとともに、今後も相談窓口のありかたについて検討していきます。 適切な虐待対応 虐待問題に対応する相談や連絡窓口の周知を図り、速やかに対応できる体制づくりと、きめ細かい支援の充実を図ります。 虐待を受けた人を一時的に保護する場合は速やかに対応し、福祉サービス事業所等と協力するなど、避難場所の確保に努めます。 虐待をおこなった養護者や保護者の抱えている問題にも着目し、総合的な支援をおこないます。 生活困窮者支援事業 生活に困窮する人やその世帯の支援方法・情報等を支援者間で共有し、速やかな支援ができるように努めます。 コロナ禍による生活困窮者が必要な支援を受けられるよう各関係機関と連携します。 各関係機関の横断的連携による居住支援や就労支援 生活困窮者、高齢者、しょうがい者、子育て世帯等のうち、住居確保や就労に困難を抱える人に対し、各関係機関が連携して横断的な支援をおこないます。 基本目標3 絆を深め孤立化を防ぐ地域づくり 少子高齢化の進展に伴い、ほんしでも後期高齢者が増加傾向にあります。また、核家族化、ひとり暮らし世帯の増加や、コロナ禍による外出自粛などの様々な要因によって、隣近所の気軽な助けあい、日常的な安否確認、見守りなどが、以前ほど容易ではなくなってきています。 生活様式の多様化やコロナ禍など様々な理由で住民同士のつながりが希薄になり、地域社会の「支えあい」の機能を維持・充実させていくことが難しい局面が増えてきました。 しかし、今回のアンケート調査では、人々が抱える「困りごと」に対して、支援したい人が支援して欲しい人をうわまわるという結果が出ています。この相互に思いやる気持ちが、「八女市に住み続けたい」と多くの人に思わせる根本にあるのではないかと思われます。 この「支援したい」という気持ちは、隣近所や知りあいなど、身近な関係性の中で発揮されやすいため、まずは顔見知りの多い隣近所同士での助けあいを充実させることが重要です。そして、社会福祉協議会とともに進めている小地域ネットワークを活用しながら、地域の助けあい、見守り、こえかけ活動を強化していくことが大切です。 アンケート調査において、自分や家族が高齢や病気、子育てなどで日常生活が不自由になったとき、地域でどんな手助けをしてほしいかたずねたところ、「安否確認のこえかけ」に次いで「災害時の手助け」が多く挙げられたことから、災害時の備えについても平時から進めておく必要があります。 さらには、少子高齢化が進展する中で、巧妙化する犯罪から市民を守るために、地域ぐるみの見守りによって、防犯活動を継続していくことが大切です。 (1)地域での身近な助けあいを進める 現状と課題 アンケート調査では、「近所付きあいもよく、安心して生活ができる事に嬉しく思っています(75歳以上女性)」という意見がある一方で、「近所付きあいが薄くなったような気がしています(75歳以上女性)」、「地域でコミュニケーションを取っていない人がいて心配(60歳から64歳女性)」との意見もあり、地域によって隣近所の関係性が異なっている可能性があります。また、コロナ禍の収束が見通せない中で、もともとは地域のつながりが強かった地域でも、徐々に人々の関係性が希薄になっている可能性もあります。 団体ヒアリング調査からは、「最後は人と人とのやりとり、つながりが核」といった意見がありました。認知症の人やその家族、しょうがいがある子を育てる親、普段の生活を見守る家族が少ない子とその親、家庭にひきこもり地域との接点が持てない人、過去に罪を犯した人など地域には様々な人がいます。皆が同じ地域に生きて、共に地域を支える大切な仲間であるということを再確認し、一人ひとりが孤立しない、助けあいの仕組みづくりを考える必要があります。 取り組みの方針 同じ地域で生活する誰もが孤立することなく、安心した暮らしをするために、隣近所の人たちが相互に関わりを深め、お互いに支えあい、助けあえるよう、支えあい活動の啓発や支援に取り組みます。 民生委員児童委員や福祉委員など地域福祉の活動をおこなう人や行政区等の地域づくりをおこなう組織が連携し、情報共有を図りながら、孤立しがちな生活を送っている人や世帯への支援の充実を目指します。また、地域福祉活動をおこなう際の情報共有のありかたを地域の実情に合わせて確認するなど、支援者が必要な情報を把握して支援できるよう努めます。 役割分担 自助(自分や家族の取り組み) 近所づきあいと地域活動参加 普段から地域の一員として、近所づきあいを大切にし、活動や行事等に参加するよう心がけます。 自分や家族のことで地域の人に知っていてもらいたい情報等は自ら提供します。隣近所の人たちが手助けを必要としている場合は、可能な限り応じるよう心がけます。 活動への理解と協力(再掲) 行政区やシニアクラブ、民生委員児童委員や福祉委員等による地域福祉活動について理解し、可能な限り協力すると共に、活動する人たちに対しては、お互い様の気持ちでねぎらいと言葉かけを大切にします。 互助・共助(隣近所の協力、地域活動団体の取り組み) 気軽なこえかけ、支えあい 隣近所でお互いに見守りを心がけ、困りごとができた場合には、お互いに声をかけあい、支えあいます。 ごみ出しや買い物、通院等の外出といった日常生活の中で、ちょっとしたことができずに困っている人がいたら、隣近所で声をかけあい、できる範囲で協力します。 地域ぐるみの支えあい 認知症やしょうがい等で支援が必要な人やその家族を地域の人が理解し、支援できるように地域で研修や交流の機会を設け、お互いに協力しながら支えあえる地域づくりに取り組みます。 配慮が必要な人への見守り協力 高齢者世帯や認知症の人、しょうがいがある人、外国人など配慮が必要な人たちに対する見守り活動を充実させるため、住民と行政区、民生委員児童委員や福祉委員等のあいだでコミュニケーションを図り、信頼関係を深めながら、情報の共有を進めます。 共助(社会福祉協議会、非営利法人を含む事業所等の取り組み) 見守り協力 「認知症高齢者等SOSネットワーク」への協力など見守り活動に協力するよう努めます。 福祉組織の支援 ふれあいサロン等の小地域福祉活動の場に参加する際等に、隣近所の人たちや地域の人たち同士の関わりと支えあいが地域福祉の基盤であることを啓発し、地域の福祉組織を支援します。 小地域福祉活動の推進 地域における福祉委員活動や福祉部会等の組織的な取り組みを支援します。 個人情報に配慮しながら地域福祉活動のありかたを地域の人と共に考えます。 居場所づくりの強化 地域の実情に合わせた様々な世代が集う居場所づくりを支援し、顔の見える関係づくりと地域住民同士の交流を進め、孤立を防ぎます。 高齢者の交流の場であるふれあいサロンでは、フレイル予防のプログラムを推奨し、介護予防の強化に取り組みます。 社協会費・共同募金を活用した地域福祉活動の支援 共同募金や社会福祉協議会会費等の地域の助けあいのための資金となる募金活動を啓発・推進し、地域福祉をはじめとした社会福祉事業への支援をおこないます。 生活支援活動の推進 外出支援活動(福祉有償運送事業)をはじめ、買い物やごみ出し支援活動の継続的な支援体制を推進します。 福祉サービス事業所等は、買い物支援等、その事業活動の中でできるサービスを工夫するなど、地域の人の生活を支える活動に協力します。 生活困窮者支援事業の拡充 生活に困窮している人や世帯を対象に、食事の確保が難しい世帯への食糧及び日用品の支援(フードバンク事業)をはじめ、子ども食堂とのきょうどうによる子ども宅食等をおこないます。 こうじょ(行政の取り組み) 支えあい活動の啓発・支援 様々な機会を通じて、隣近所の人たちや地域の人たち同士の関わりを深め、お互いに支えあい、助けあうことが地域福祉の基盤であることを啓発します。 地域でおこなわれている支えあいの活動や事業所等がおこなっている地域公益活動等を積極的に広報し、地域福祉活動の輪が広がるよう支援します。 小地域福祉活動の支援 社会福祉協議会が推進する小地域福祉活動事業を支援します。 生活支援活動の推進 買い物支援やごみ出しサポート等の生活支援について、社会福祉協議会と連携しながら取り組みを進めます。 配慮が必要な人への支援 認知症の人やしょうがい者、外国人など配慮が必要な人への支援に努めるとともに、その支援の必要性について周知を図ります。 ひきこもりや自殺予防のための支援の充実を図ります。 (2)災害時の避難に備える 現状と課題 ほんしは、平成24年7月九州北部豪雨で大きな被害を受けました。その後も、平成29年7月九州北部豪雨、平成30年7月豪雨、れいわがんねん7月、8月の大雨、令和2年7月豪雨、令和3年8月大雨と、毎年、自然災害に見舞われ、その恐ろしさを目の当たりにしています。 団体ヒアリングからも、「大雨や台風の際に災害が怖いという声を住民から聞く」との声が挙がっています。また、頻発する災害を経験し、ほんしにおける自主防災組織率が98.9%(令和3年3月末現在)になるなど、防災に対する市民の意識は高まっています。 特に、高齢者やしょうがい者、乳幼児、傷病者、外国人などは、いざ災害が生じた際に特別な支援が必要となります。地域社会全体で防災対策の充実を図ることはもちろん、要支援者の視点での対策もまた、緊急の課題となっています。 取り組みの方針 普段から住民相互の見守りや防災訓練をおこない、災害時の円滑な避難行動に備える活動を進めることで、いのちを守る支援の充実を図ります。 地域の実情に即した防災を実現するため、自主防災組織による地区防災計画の策定を推進します。 災害時に配慮が必要な人への支援について、検討を深めます。 役割分担 自助(自分や家族の取り組み) 情報収集 日頃から家族で災害時の避難場所や連絡方法を確認し、防災ラジオ等による地域の情報収集に努めます。 助けあい 避難行動要支援者支援制度等の取り組みを理解し、災害弱者への支援に可能な限り協力します。また、地域の防災訓練等に参加します。 互助・共助(隣近所の協力、地域活動団体の取り組み) 助けあい 日頃から声をかけあえる関係づくりに努め、被災時には隣近所の助けあいを大事にします。 災害への備えと日頃のつながりづくり 日頃から避難行動に支援を必要とする人の情報について、個人情報保護に配慮しつつ、支援者間で可能な範囲で共有し、必要な際には地域全体で支援できる体制を築きます。 災害時の避難行動に支援が必要な人をできる範囲で交え、必要となる様々な状況を想定して防災訓練を実施し、自主防災組織を強化します。 自主防災組織が中心となって、地域の実情に即した地区防災計画の策定に取り組みます。 共助(社会福祉協議会、非営利法人を含む事業所等の取り組み) 地域協力、災害時の備え 地域で開催される防災訓練等に積極的に参加し、事業所内でできる災害物資の確保や被災者の一時的な受け入れ協力等の検討を進めます。 災害ボランティアセンター 災害ボランティアセンターについて、運営の手引きを見直しながら充実を図ります。 近隣市町の社会福祉協議会や災害時相互協力協定団体、八女市社会福祉法人連絡会とのさらなる連携強化を図ります。 こうじょ(行政の取り組み) 防災訓練、地区防災計画策定の支援、避難行動要支援者支援事業 災害時に必要となる様々な状況を想定して、避難情報等の伝達訓練や防災訓練をおこないます。 自主防災組織が地域の実情に即した地区防災計画を策定できるよう支援します。 避難行動要支援者名簿の作成や活用等に関わる取り組みについての理解と協力を求める取り組みを進めます。 避難行動要支援者名簿を整備するとともに、具体的な避難方法等について定めた避難行動要支援者個別計画の策定に努めます。 防災ラジオ等による情報発信 防災ラジオやホームページなどで避難に関する情報についてきめ細かい情報の発信に努めます。また、ハザードマップの内容について、分かりやすいよう充実を図ります。 地域と協力した情報発信と啓発 自主防災組織活動が活性化するよう支援し、市民の防災意識を高めるためにも行政区と連携し、防災やげんさいについての情報提供や啓発の充実を図ります。 福祉避難所の確保 災害時に一般避難所での生活が困難な人等の受け入れ先については、合理的配慮を想定して検討を進めます。 (3)地域の見守りで防犯力を高める 現状と課題 昔ながらの付きあいやつながりがあった地域社会の絆が希薄になると、隣近所の動向が分かりづらくなります。特に、コロナ禍によって住民相互の交流が極端に少なくなってしまった結果、互いへの関心がかつてに比べて薄れてしまった側面があります。 「令和3年警察白書」によると、コロナ禍で人のつながりが希薄化する中、インターネット上の会員制コミュニティである「オンラインサロン」が、帰属意識を求める人などのあいだで人気が高まっていることが示されています。オンラインサロンの中には主催者の連絡先や契約内容が示されず、退会手続きすらとれない事例もあり、解約トラブルを巡る相談が急増しているとのことです。 このように、消費者トラブルは時代とともに変遷し、犯罪の手口も巧妙化しています。生活様式の多様化に加え、コロナ禍による「新しい生活様式」の定着により、隣近所の様子が分かりにくくなっている現在の状況は、普段の何気ない付きあいが相互の見守りにもなっていた時代とは異なり、犯罪が生じやすく気づかれにくい状況であるとも言えます。 多様化する犯罪に対応するためには、警察による防犯対策とともに、日頃からの隣近所との付きあいなどを通じ、地域の連帯に基づく防犯力を高めておくことが大切です。地域ぐるみで情報を共有し、支えあい・助けあいの精神を発揮する中で、地域の安全を守る対策を検討する必要があります。 取り組みの方針 「地域の安全は地域で守る」という意識を高め、日頃からの付きあいと情報の共有によって、地域の防犯力を高めます。 役割分担 自助(自分や家族の取り組み) 防犯活動への参加 地域における犯罪を防止し、安全で安心して暮らせる地域とするため、防犯のための地域活動やボランティア活動への理解を深め、積極的に参加します。 互助・共助(隣近所の協力、地域活動団体の取り組み) 防犯情報の収集・発信 犯罪の特徴や発生箇所、さらには不審者の情報等、防犯につながる情報を警察署や防犯協会各支部など関係機関から収集し、地域で情報の共有を図ります。 福祉サービス利用者等を犯罪から守るため、遭遇しやすい犯罪情報を周知します。 地域での防犯活動 防犯パトロール体制を整備し、地域の安全は自分たちで守ります。 登下校の時間帯にあわせた買い物や犬の散歩などをおこない、地域で子どもたちを犯罪から守ります。 共助(社会福祉協議会、非営利法人を含む事業所等の取り組み) 小地域ネットワーク活動の推進 小地域ネットワーク活動を進展させ、各地区において悪徳商法等による消費生活問題の被害を未然に防ぐなど、防犯活動への取り組みを支援します。 こうじょ(行政の取り組み) 地域の安全環境づくりの支援 防犯灯など、防犯施設の充実に努め、地域の安全環境づくりを支援します。 防犯に関する知識の普及・啓発 警察署と連携し、防犯情報の共有を図ります。 高齢者等を狙った悪徳商法の手口や被害についての情報提供や、被害の予防意識の啓発を進めます。また、地域や団体等での学習の機会を利用して知識の普及・啓発に努めます。 防犯意識の向上 発生箇所や内容など、具体的な犯罪発生情報の提供に努め、防犯意識の向上を図ります。 基本目標4 社会参加の意識づくり コロナ禍により、市民の交流や見守り、ボランティア活動の休止が余儀なくされており、このことが、地域福祉の推進に大きく影響を及ぼしています。 これまで様々な地域活動に参加してきた市民にとっては、コロナ禍によって社会参加の機会が減ってしまい、閉じこもりがちな生活になってしまう等の課題が生じています。また、地域のボランティア活動も自粛が長引いており、参加者の高齢化も相まって、これまでの担い手が活動から遠のいてしまうことが危惧されます。 従来の地域福祉活動で培った関係性を大事にしながら、ボランティアの担い手や社会参加する市民が安心して活動を続けていけるよう、デジタル技術も取り入れながら、新たな地域福祉活動を推進していく必要があります。 (1)共に生きる社会について学ぶ場をつくる 現状と課題 地域福祉においては、個性や価値観を認めあう住民相互の理解や連帯が不可欠です。 貧困や失業に陥った人やしょうがいのある人、過去に罪を犯した人など、様々な状況にある人を社会的に排除するのではなく、地域社会への参加と参画を促し、社会に統合するという「共に生きる社会づくり」の視点に立って、支えあいのまちづくりを推進していく必要があります。そのためにも、私たち一人ひとりが社会の一員として、共に生きる社会の在りかたや様々な立場のかたについて学んでいかなければなりません。 取り組みの方針 共に生きる社会づくりのために、様々な立場や年齢層に応じた人権や福祉に関する学びの場や機会の充実を図ります。また、家族だけで重い課題を抱え込んでしまうことがないよう、福祉や介護の制度やサービス、育児や子育て不安の解消、介護や支援の方法等について、学ぶ場や機会の充実を図ります。 行政区や地域の各種団体、学校、社会福祉協議会、地域の福祉事業者等との連携により、各種啓発活動や福祉教育の充実、さらには地域における多様な市民の交流やふれあう機会の充実を図り、心のバリアフリーと多様性の理解を促進します。   役割分担 自助(自分や家族の取り組み) 人権・福祉への関心と学び 人権や福祉について関心を持ち、学習会等に参加し、家族と情報を共有して理解を深めます。 福祉や介護の制度やサービス、育児や子育て不安の解消、介護や支援の方法等、自分の状況に応じた学習会や交流会等に参加します。 互助・共助(隣近所の協力、地域活動団体の取り組み) 地域での学習機会の確保 地域の資源や人材を活かし、地域での福祉のつどいの開催や、福祉の制度やサービス、支援の方法、育児や子育て不安の解消等に関する学習の機会を設けます。 学習会を開催する場合は、地域住民に周知すると共に、子育てや介護中の人でも参加しやすいような工夫に努めます。 共助(社会福祉協議会、非営利法人を含む事業所等の取り組み) 対象者にあわせた学ぶ機会の提供 地域から協力依頼されたときは、積極的に協力し、地域住民への学ぶ機会の提供に努めます。 児童生徒をはじめ、当事者及び家族の協力も得ながら対象者にあわせた福祉制度やサービス等に関する講座及び学習会を開催し、福祉教育の推進を図ります。 こうじょ(行政の取り組み) 認知症に対するただしい理解促進 高齢化に伴って増加が見込まれる認知症に対するただしい理解が得られるよう、地域ぐるみの啓発活動を積極的に推進します。 認知症の人への理解や対応方法を広めるため、地域や学校、市民が訪れる機会が多い事業所等において、認知症サポーター養成講座を継続開催し、内容を充実します。 デジタル技術の活用 デジタル技術の活用による、新しい地域福祉活動を検討します。 参加者への配慮 学習会等を開催する場合は市民に広く周知すると共に、子育てや介護中の人等が参加しやすいような時間や場所等について配慮します。 積極的なサービスや制度の周知 対象者にあわせた学習会や出前講座等を継続して実施し、福祉サービスの情報や、育児や子育て不安の解消、支援の方法等に関する市民の理解を深める取り組みを進めます。 (2)交流・ふれあいを促進する 現状と課題 ほんしでは、高齢者の「ふれあいサロン」や子育て親子の「つどいの広場」、しょうがい者の「地域活動支援センター」など、利用者の状況に応じた交流の場があります。また、利用者の状況を問わず多くのかたが利用できる公民館なども、身近な交流の場となっています。このような交流の場や地域行事を通して、地域住民がつながりを深め、お互いに支えあう関係性を築いてきました。 しかし、コロナ禍においては、人との交流が制限され、地域の絆やつながりが希薄化している現状があります。そのため、今後はこの地域の絆を回復させるとともに、より深めていけるような交流の場を一層充実させていく必要があります。 また、近年は行政区加入率の低下や地域行事への参加者の減少も大きな課題です。アンケート調査でも、「隣組、町内会加入が条件のようで強制的に感じた(30歳代女性)」、「ほかの地域から転入して来た人と行政区への加入について揉めたことがある(40歳代女性)」との意見もあります。 行政区の加入率が低下することは、役員の高齢化、固定化につながります。新しい担い手が不足することがより柔軟な自治会活動の妨げになりかねないことから、時代に即した地域のありかたを模索していく必要があるといえます。 取り組みの方針 現在推進しているふれあいサロンの充実を図り、多くの地域住民が気軽に参加し、情報交換ができる場となるような工夫を検討します。また、担い手不足を解消するためにも、新たな人材を育成したり、地域の事業者等に協力を得たりするなど、身近な交流の場を維持・継続できる取り組みを進めます。 地域行事は大事な社会参加の機会として、今まで以上に行政区や地域の各種団体等が連携を深めながら地域活動の活性化を図ると共に、地域に暮らす多くの人が参加できる行事の開催方法等を工夫します。また、シニアクラブや子ども会など市民で組織し活動する団体の支援を継続します。 地域における市民の交流・ふれあいを促進するため、各種交流行事の情報発信に努めるとともに、誰もが気軽に集うことができる交流スペースの確保と交流機会の充実を図ります。 役割分担 自助(自分や家族の取り組み) 参加と協力 意識的に外出する機会を設け、ひきこもりがちにならないよう自ら心がけ、地域で取り組むふれあいサロン等へは自分や家族もできる限り参加し、健康維持や介護予防に努めます。 自分のできる範囲でふれあいサロン等へ協力します。 地域参加 地域の行事や各種団体がおこなう活動へ関心を持ち、家族そろって積極的に参加し、地域にふれあう機会を大切にします。 互助・共助(隣近所の協力、地域活動団体の取り組み) 地域住民が集える場づくり 小さい規模のふれあいサロン等、住民に身近なところで気軽に集える場を積極的に設け、参加を広く呼びかけます。 ふれあいサロン等の運営について、できるだけ多くの人が参加できる工夫をします。地域の人の理解と協力を求めながら、ボランティアの確保に努めます。 参加する人たちが持つ経験や能力、特技や趣味を活かし、交流を深めることができるような場や機会の充実を図ります。 地域振興計画の実施と地域福祉の推進 地域で策定された振興計画等の趣旨を大切に、地域でおこなわれている活動や行事、子ども会やシニアクラブなど各種団体の意義について周知し、その活動の活性化や継続に努めます。 地域の活動や行事については、多様なライフスタイルを尊重しながら、年齢やしょうがいのあるなしに関わらず、地域に暮らす多くの人たちが参加できるよう工夫します。 新たな入居者への対応 転入世帯に対して地域の活動や行事等を分かりやすく説明し、地域活動への協力を求めます。 地域の拠点の利便性向上 地域活動の拠点となる地域の公民館や集会所等をバリアフリー化するなど、地域住民がより利用しやすい施設へ改修するなどの検討を進めます。 共助(社会福祉協議会、非営利法人を含む事業所等の取り組み) 地域への協力・支援 地域のふれあいサロンへの人材、アイデア、場所の提供等、可能な範囲で協力し、地域に開かれた事業所づくりに努めます。 積極的に地域における取り組みを検討します。 交流の場を通した地域課題の把握と人材育成 地域で取り組まれているふれあいサロン等の活動を支援する中で、その地域の課題解決と人材育成に主眼を置いて交流の場の育成をおこないます。 しょうがいがある人同士や家族介護者等がお互いに交流を深めることができる場や地域での世代間交流ができる機会を充実させます。 福祉的活動への支援 地域のまちづくり団体、行政区、各種福祉団体等が実施する福祉的な活動や行事を支援します。 高齢者等が気軽に参加できる福祉事業に取り組みます。 こうじょ(行政の取り組み) 地域福祉推進 小地域福祉活動事業によるふれあいサロンや有償ボランティア等の地域住民主体の場づくりを支援します。 当事者交流の場づくり 子育て家族、しょうがいがある人、家族介護者など、当事者同士がお互いに交流を深めることができるような場や機会の確保と充実を図ります。 公共施設整備 公共施設における合理的配慮に努めると共に、情報や施設のバリアフリー化を図り、多くの人が交流の場へ参加しやすい環境づくりを促進します。 公共施設を新設する際には、合理的配慮が必要な人等の意見を取り入れながら、誰もが利用しやすい施設整備に努めます。 健康維持・増進 健康維持・増進を図るためのけんしんや健康教室の場を設け、市民の参加を促進します。 地域活動の啓発・育成 未来づくり協議会の研修会など地域活動の担い手となる人たちに向けた学習会や研修等を継続します。 市民向けの地域福祉・地域での支えあい等に関する研修をおこないます。 地域のまちづくり団体や行政区でおこなわれている活動や行事について広く紹介します。 地域活動の担い手支援 行政区やシニアクラブ、子ども会など市民で組織される団体が活動しやすいように支援します。 介護予防の推進 介護予防に自ら取り組めるような通いの場の充実・コミュニティの再構築・人材育成を図り、介護予防を推進します。 (3)ボランティア活動に参加しやすくする 現状と課題 ボランティアは、地域の担い手が不足する現代において、とりわけ大切な人材です。ほんしでは、社会福祉協議会がボランティアセンター事業をおこなっており、市民のボランティア活動への参加促進と支援を図っています。 ボランティアセンターでの需給調整・対応件数は、平成29年度は275件でしたが、令和3年度は366件と増加しています。 また、アンケート調査結果では、福祉にかかわる地域活動やボランティア活動などに参加したいと回答した人は半数を超えており、市民の多くが何らかの形で地域に貢献したいという気持ちを有していることが分かります。その市民の気持ちを行動につなげる橋渡し役を、地域や団体、社会福祉協議会等とともに、行政が担っていく必要があります。 取り組みの方針 多くの住民が社会参加できる機会の充実を図るために、ボランティア情報の収集・提供に努めます。また、住民のボランティア活動への参加意欲を高めるために、社会福祉協議会と連携し、地域福祉の担い手となるようなボランティアを育成するとともに、現在活動しているボランティア団体等の運営を支援します。 役割分担 自助(自分や家族の取り組み) 経験を活かした活動参加 ボランティア養成講座等に積極的に参加し、できる範囲で趣味、特技、経験等を活かしたボランティア活動に参加・協力します。 互助・共助(隣近所の協力、地域活動団体の取り組み) 担い手の確保 ボランティア団体は、活動の充実を図るため、活動内容を地域住民に周知すると共に、新たな担い手の確保に努めます。 地域とボランティア団体の協力 地域で開催する学習会や交流の場において、ボランティア団体の活用を積極的に進めます。 ボランティア団体は、地域での学習会や交流の場への協力要請に積極的に応じるなど、地域との相互協力を進めます。 共助(社会福祉協議会、非営利法人を含む事業所等の取り組み) ボランティア団体支援 市内で活動するボランティア団体の活動支援、相互交流の支援、情報交換・担い手の確保に関する支援等をおこないます。 コーディネート機能の充実 各地域の範囲で、ボランティア情報の収集と発信をおこなうと共に、ボランティアをしたい人と求める人双方のニーズを的確に把握し、コーディネートできる取り組みを進めます。 講座開催 ボランティア養成講座を開催し、より多くの市民にボランティア活動や地域での支えあいについての学びの場を提供します。 こうじょ(行政の取り組み) 生涯学習を含めたボランティア育成支援 福祉ボランティアのみならず、教育活動、生涯学習活動の場等、多様な人が地域で活動できる場を持てるように各種講座の開催や活動内容の広報等を充実させます。 公共施設開放 ボランティア活動に活用できるよう公共施設を広く開放し、市民の自主的な社会貢献活動を支援します。